植物から顔料を取りだす実験
以前ハイビスカスからクレヨンを作る実験を行いました。

まだ見ていない方はご一読いただけたら幸いです。
簡単に言うと、植物に含まれる染料を、色素だけ集めて固めたものを顔料といい、それに油を混ぜると絵具やクレヨンになるというお話です。
電位など細かい話は以前のブログに掲載しているので、今回は簡単にざっくりと作り方を載せていきます。
動画にも実験風景をアップしています
こちらがフクギの葉っぱ。草木染では植物の色と実際に取れる色が違うことがしばしばあるので、煮だしてみるまで何色が出るのか分からない場合が多いです。

フクギの場合は葉が緑ですが、古い葉っぱは黄色くなってくるので、黄色色素を含んでいるのだろうなと予測できます。
後は根を少し切ってみたり、枝をはがしてみることで、染料の予測を立てることがあります。
新たな植物を染めてみる際は、まずは先人の知恵をお借りして、既に実験済みかどうか調べます。
私の経験上、ほぼ検討の付けた植物は、過去に誰かが染めており、困ったことはありませんが、誰も染めたことがない植物を使う際は
- 上温水で放置
- 煮出す
- アルコールに漬ける
- アンモニア水に漬ける
ことで大抵の染料を取り出すことができます。一部媒染剤を使用することで違う色を取り出す植物もありますが、上記の方法でどの色も出ない場合は諦めることにしています。
フクギの場合は単に煮込んだだけでは黄緑っぽい色素が出ますが、アルカリに傾けることで黄色色素が抽出されます。
黄色の色を出す植物はそれほど珍しくなく、身近な食材では玉ねぎ、ノニ、桑、みかんの葉などでも抽出できます。

染料が濃いほどオレンジに近い色合いになります。
次に染料の色素を凝集させます。
つまり染料に含まれる色素を固めて粒にして、顔料を作ります。
染料にミョウバンを入れることにより、色素のつぶどうしがくっつき沈殿します。
そのあとコーヒーフィルターを通して、顔料だけを濾していきます。

ミョウバンを入れる際には注意が必要です。重曹と反応して泡が発生する場合があるので、温度を少し下げてからミョウバンを投入します。

泥状の顔料が残りました。この時点で絵具として使うこともできますが、乾燥させることで長期保存が可能となります。

乾燥させた色素には微量のミョウバン結晶も含まれています。このままでは逆に粒が大きすぎて、油と混ぜた時に混ざらないので、すり鉢などで細かくします。
顔料は1ミクロン以下が望ましいとされます。1ミクロンは想像しずらいと思いますが、理想は抹茶ほどの滑らかさ、最低でも小麦粉くらい(10~20ミクロン)のさらさら具合を目指します。

最後に、出来上がった顔料にオイルを添加するとクレヨンが作れます。メディウムといい、顔料を紙に固定させるために使います。

クレヨンに使うオイルは蜜蝋、パラフィン、ソイワックスなど常温で固形になるものを使います。粘度調整にはサフラワーオイル、リンシードオイルなど乾性油を添付します。
ステアリン酸などを使うと顔料とオイルの定着が良くなることもありますが、使わなくてもかまいません。
後は全てを混ぜて熱すると溶けていくので、型にいれて固めると完成です。

いくつか実験してみると、蜜蝋100%は柔らかくねばねばするので、必要に応じて他のオイルを添加するほうが良さそうです。
パラフィンはぱりっとした仕上がりで滑りも良いですが、石油系化学物質に抵抗がある場合はソイワックスやリンシードオイルを添加すると良いでしょう。
今回は実験ということもあり、分量も図らず顔料の大きさもまちまちのまま固めたため、顔料とオイルの混ざり具合にムラがある結果になりました。(固める際に顔料が底に沈殿していく)
より精度を高めるためには、顔料を細かくする作業をミルという機械にかけ、ふるいにかける必要があります。
ただしミルやふるいも細かい粒度になればなるほど高額になるので、趣味や実験に使うにはハードルが高いかもしれません。
今回は植物染料からクレヨンを作る実験として、フクギで試してみました。
すべての植物からクレヨンを作れるわけではなく、顔料化できるかどうかが第一関門となります。