興味はあったけど踏み出せなかった革の世界
以前から革製品が好きで、色々調べたりタンナーを訪問したり、意味もなく革を買っていたのですが、自分で作るという発想はありませんでした。
それは縫製の世界に入ってからも同じで、ジーンズの革パッチやアパレルで革に触れる機会や、パーツとして使うことはあっても自分で作るのは難しい、革職人は至高の領域なのだろうという思いがありました。
現在はデニム以外の素材の研究や織物をするようになり、革と融合させると選択肢が広がるだろうなと感じ、改めて革製品を作ってみることにしました。
服作りと似ている部分と違う部分
レザークラフトは比較的独学でも始めやすい分野の工芸だと思います。
専門的な領域(ランドセル、バッグ、グローブ、手袋、革ジャンなど)は難易度が格段に上がりますが、コインケース、名刺入れなどの小物に関しては特別高価な道具も必要なく、型紙からも作りやすいかなと感じました。
洋服も作るものによって難易度が全く変わりますが、案外着れる服でもシンプルなパターンで作れるものもあります。
服の場合、生地端をどう処理するかが難しいところで、縫い代が必ず付きます。また、初めて作るものは一度は仮縫いしないと完成したものの予想がつきません。
革は後処理が必要ですが切りっぱなしでも作れます。厚紙で型紙を作ってシミュレーションもしやすいです。
ただし革は縫い直しがきかないし、切りすぎても戻せないので一発勝負の緊張感はあります。
そして服作り以上に「厚み」を考慮するという点が個人的には難しく感じました。
まずはスマホケースを手縫いで作ってみました。
奥にあるのは5年ほど前にシザーケースが欲しくて適当に作ったものです。
同じ革でも経年変化でまったく違う表情になっています。
雑でとても他人に見せられるものではありませんが、形になる喜びは服作りに通じるものがありました。
革とハイビスカスの手織り布を組み合わせて、キーホルダーを作ってみました。
織物単体では少し強度や見た目が寂しいものがありましたが、これなら普段使いしても問題なさそうです。
手織りの手作り感と革がやはり相性が良さそうです。
どの革を使うのか
服作りではどの生地を使うかによって、難易度が大幅に変わります。
ものによっては使うミシン、針、送り歯、押さえ、パターンも替えます。
その点は革も同じで、どの革のどの部分を、どれくらいの厚みで使うかが、製品の完成度と共に縫いやすさに繋がってくるのだと思います。
生地の地の目に似た、繊維の流れる方向を気にするのも服作りと似ているとこだと感じます。
今回は豚革を使いました。
豚革は日本で100%生産され、通気性も良く軽くて頑丈、革の質もトップクラスの上、安価に取引されています。
20年前、マシュアのサドルプルアップの質感に感動し、ブッテーロやミネルバのエイジングのとりこになって、プエブロ、マヤといった少し変わった革を好むようになりましたが、最近は有名なタンナー以外の革や国産タンナーの革もものすごく魅力的だと感じるようになってきました。
中でも豚革はとても良い革だなと実感します。
値段も他の革の半額程で買えるので、財布にも優しいです。
革の世界は今後縮小するのか
天然素材の研究を進めていくと、革に変わるフェイクレザー、ヴィ―ガンレザーの市場が大きくなっているのを感じます。
動物の革を使うという残虐性から、なくすべきだと訴える人もいれば、革は本来捨てる部分を再利用しているのだから問題ないという考えもあります。
水も多量に使うので配水問題などもあります。
僕はどの分野でも考えは変わらず、「選択肢があることが豊かさにつながる」と考えているので、革がまったくなくなることには反対ですが、今後縮小していくのは仕方ないだろうなと思います。
今後革を買う場合も、環境負荷が少ない作り方や、違法に革を採取していない信頼のおけるタンナーを選ぶようにします。
同時に、フェイクレザーの研究も進めていきます。