天然染料の色落ちについて
現在洋服などに使われている染料のほとんどは化学染料を使っているので、普段使いで色落ちや経年変化を気にする機会は少ないと思います。
一部で、ジーンズなどは生地の表面だけを染め、あえて摩擦などでどんどん色落ちするように作っている場合もあります。
天然染料、いわゆる植物、鉱物、昆虫などを使った染料はどうしても生地に定着しづらいので、日にちがたつと色落ちしてくることは避けられません。(使われる原料により色落ち程度の差はあります)
天然染料を使う作り手としては、いかに色落ちしにくい工夫や加工をするのか考え、もしくは色落ちすることを前提としたモノづくりを行いながら日々自然と向き合っています。
もちろん化学染料が悪いというものでもなく、それらを混ぜたり製品に使うことが間違っているとも思いません。
ただ、購入してくれる人にはそういった情報を全て開示することが必要で、納得したうえで購入してもらうことは必要だと思います。
ハイビスカスの自然布織りの経年変化
現在ハイビスカスの繊維を使った自然布アクセサリーの販売をしています。
使う材料はハイビスカスの枝の靭皮繊維。発酵して糸にし、フクギ、藍、茜、蘇芳など植物染料で染めています。藍は沈殿藍、他はミョウバン媒染を行いました。
写真左が織った直後、右が日当たりのよい場所で静置した半年後の布です。
やや赤系統が少しピンクに、黄色が少しクリーム色に変わっています。藍はほぼ色が変わらないことから堅牢度が高いことがうかがえます。
次に普段使いしたときの経年変化です。
同じ時期に作った作品、左が完成直前、右がサンプル使用で6か月経過です。
革の経年変化はありますが、布の色落ちはあまりみられません。
以上のことから、ハイビスカスの糸に天然染料で染めた場合、
直射日光にはやや弱く、当て続けると赤色、黄色系統が色落ちしてくる。
アクセサリーなど普段日光に当たらない環境なら半年以上は色が保たれることが分かります。
アクセサリーはポケットに入れて普段使いしていたので、汗や摩擦にもある程度の耐性があることが予想されます。
また、普段使いで色移り等がないことも確認済です。
色落ちを防ぐ方法
できるだけ色落ちを防ぐために、防水スプレー、UVカット加工、蜜蝋を塗るなどの手法を試す中、アクリル水性樹脂を表面に塗ることが一番効果が高いことがわかりました。
左が織った直後、真ん中がアクリル水性樹脂でコーティング、右がそのままで、1年ほど日光下に置いた状態です。
1年もたつとやはり色がパステル調になっていきますが、何もしない状態に比べて色止め効果があります。
これが5年後、10年後どのように変化していくのかはまた研究を続けます。