染め

コケでハイビスカスの糸を染めてみる

赤系染色の候補を探す

ハイビスカスの糸を染める時に青色は藍、黄色はフクギを使っています。これらは堅牢度も高く一度に染められる量も多いので、最も染色効率が良いです。

赤色に関しては当初はハイビスカスの花びらを染料として使っていましたが、花びらの取れる量に対する染料が少なく、1か月で退色するほどで堅牢度も低いので、現在は茜や蘇芳、ノニの根っこなどで代用しています。

↑ノニ

↑茜

これらはどちらかというとオレンジに近く、今回バリエーションを増やすため赤紫色に近い染料を探すことにしました。

候補としては貝紫、紫根、コチニール、コケなど。今回は身近にあるものですぐ採取できそうなコケを染料として利用できるのか実験してみます。

どこにでも生えているコケ

コケは探してみるとどこにでも生えています。ただ染料として使えるのは地衣類、なかでもウメノキゴケというのがメジャーなようです。

地衣類とは

藻類と菌類が共生した状態のものが地衣類。写真のような緑のコケとはまた別の生物。

ウメノキゴケという名前から、木についているコケなのかと思い、探してみると、ありました。ただ梅の木ではなく沖縄のマツの木についていたので、同種なのかは分かりません。

近くに別種のコケも見つかりました。カラタチゴケの1種でしょうか。

早速これらを採取し、汚れを落としてアンモニア水に入れてみます。

コケ5gに対し3%アンモニア水200mlで作りました。

地衣類の染色研究は紀元前2000年前からあり、リトマス紙の原料としても使われていたようです。リトマスゴケに存在するレカノール酸を加水分解し、、アンモニアの酸化を通して、最終的にオルセイン色素とリトマス色素になるとのこと。

アンモニアに漬けたとたんに赤茶色の色素が出てきました。もう少し汚れを綺麗に落としておけば茶色成分は減ったのかと思います。

アンモニアの取り扱いには注意。使用する際は換気の良い場所で、マスクとメガネが推奨。直接溶液を吸い込まないこと。

一か月ほど放置してしまいました。コケがどこにあるのか分からないくらい濃い紫色になっています。ブルーベリージャムの色合いに近いです。

コケを取り出すと漆黒のような色になっています。ここからアンモニア水だけを取り出しますが、激臭注意です。あまりの臭いにこのまま1時間ほど放置します。

好みにもよりますがこの時に水で薄めることも可能です。自分は5倍ほどに薄めました。

アンモニア水200ml+水800mlの溶液を作りました。

ここに酢酸を加えると赤紫になるとのこと。(酢酸オルセインになると思われる)

酢酸を加えるとアンモニアが中和され、臭いが少し落ち着きました。ここにハイビスカスの糸を加えて煮沸することなく常温放置します。

実験結果

コケの染料を実際に染めてみた結果です。

とてもきれいな赤紫に染まりました。これは綿や絹など様々な素材でも堅牢に染まりそうです。ハイビスカスの糸の染色の難しいところは、糸の光沢を失わせないように染めることですが、常温放置のため糸のダメージは最小限となっています。

他の染料と比べても全く違う新しい色ができました。これほどまで強力な染液が出来たのは意外な結果です。

実際に5gのコケから1リットルほどの染液が出来たので、生産効率も良さそうです。

さらに今回は染めに媒染剤も使わず、熱も加えないという天然染料のセオリーを無視したものになっていますが、しっかり染まっています。ちなみにハイビスカスの糸はセルロースのため、本来は精錬作業や媒染、煮込み作業は必須となります。(濃染処理は不要)

今後も新しい材料が手に入り次第実験をしてみようと思います。

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