WAREHOUSE 1001xx 2008年
アメカジブランドウエアハウスの定番1001xx(鹿革パッチ)。
ブランドの話や1001xxの話をすると書ききれないので、作り手から見たこのジーンズの魅力を書いていきます。
生地のクオリティをあえて下げる
生地屋の世界では基本的に、糸が長くて細くて強いものが良いとされています。
染色も、色落ちしない堅牢度が評価のひとつとなっていますが、このデニムはまったく真逆のアプローチをしています。
ヴィンテージデニムを参考に作ったと言われるウエアハウスの生地は、あえて短く太い綿糸を混ぜ込み、染色も色落ちしやすくなっています。
綿の種類、混率、紡績方法、番手、染色回数、濃度、経糸よこ糸の打ち込み本数など細部にわたるバランスの上で出来上がったデニムは、誰が履いても1年くらいでかっこいい色落ちを見せてくれます。
荒々しい生地とは裏腹に、とても綿密に計算された至高の生地です。
縫製のオリジナリティ
ジーンズという完成されたデザインの服は見た目に違いが現れにくいです。
生地の色目や生地感と同時に、ジーンズの面構えに重要なのは縫製になります。
縫う場所によって糸の太さや色、運針の数を変え、あえて切れやすい綿糸を使う潔さ。
縫製側からすると、綿糸はコストが高い上に縫っているときに切れやすく、出来ればあまり使いたくないのが本音。
糸の太さや運針数を縫う箇所ごとに変えるのは手間だし、極端に太い糸は針やミシンも特注のため扱いづらいので、現場はとても大変なのだと思います。
そういった現場の苦労の結果が、他のジーンズと比べた時に圧倒的な存在感の差になります。
安価なジーンズはこういったところでコストを削るので、のっぺりとした平面的なジーンズに見えます。
客を満足させるストーリー
切れやすい縫製、色落ちしやすい生地、ただし1本2万円を超える。
普通に考えるとこんなジーンズは誰も買いません。
ただしウエアハウスはブランド力を持って逆に価値に変換しています。
リーバイスのヴィンテージデニムを研究し、再現。
こだわりの縫製、ヴィンテージミシンを使う。
あえての非効率。あえての歪み。
ばんざいループ、一筆縫い、Vステッチ、隠しリベット、ユニオンスペシャル。
何も知らない人が聞いても良く分からないですが、ターゲットを絞った層にはどんぴしゃ。
こういったブランドつくりもウエアハウスのすごさのひとつです。
100着以上デニムを履いてきた中で、トップクラスに「楽しい」と思えるジーンズはウエアハウスです。