染め

草木染めの魅力。身近にあるもので染める楽しみ

自然をおすそ分けしていただくという行為

草木染めは合成染料に比べ、色が退色しやすく、定着させることも難しいうえ、染まる色合いも淡くなりがちです。

アパレルの仕事をしている時はほぼ合成染料の色に囲まれていました。優れた発色性や安定度、堅牢度の高さは言わずもがな、近年では豊かな色彩表現も可能になってきている合成染料の良さは身に染みて分かっています。

それが質の安定化、低価格化につながり、消費者も恩恵を受けています。

それでも今、自分が天然染料で染めを行う理由は、「地球環境のために」といった崇高な理由ではなく、単純に天然染料の色合いが好きで、色素を布や糸などに移すという行為が、自然の魂を作ったものに宿す、尊い行いだと感じているからです。

糸の原料になる繊維も自然のもの、それを発酵させるのも自然の力、染めるのも自然の力、自分はただ手を動かして重ねていくだけ。

そうしてできたものを必要な人に渡していく、そしてもらった人が自然の力を受け取る。

要するに自分がしていることは大したことでなく、自然のエネルギーを橋渡ししているだけなんです。

同じ色でも違う雰囲気をまとう

赤は赤、黄は黄、当たり前ですが言葉と色のイメージは大抵の人が一致すると思います。

黄色と言っても濃淡や他の色の混ざり具合で微妙に違いますが、天然染料はその微妙な色加減を楽しむことができます。

例えば、黄色の染料を作ってみます。

左からフクギ、中央はサトウキビ、右はオオバギです。

オオバギは耳馴染の無い方もいるかもしれません。沖縄ではよく見る木です。

↓オオバギ

引用:西表植物図鑑

どれも黄色ですが微妙に色合いが違います。サトウキビは少し緑が入っています。

ウージ染めといって沖縄では緑や黄色に染める技術も確立されています。

染める回数、媒染具合もそうですが、採取した時期、場所、気温なども影響してくるのでまったく同じように染めることは難しいです。

なるべく安定した染料を作るのがプロの染色家の腕の見せ所です。

自分は趣味の染め人なので、毎回色の違いもあまり気になりません。

ちなみに一番早く退色するのはオオバギです。

次に赤色です。

左からニシキアカリファ、下は蘇芳、右はハイビスカス

ニシキアカリファ

ハイビスカスは元々薄いピンクでしたが既に退色が始まっています。

ハイビスカスの色素はハイビスカスの繊維に染まりづらいです。なぜでしょう。

同じ赤系統でも、アントシアニン系かカロチノイド系かで違いが出てきます。

ニシキアカリファは青も含まれていそうなので、染液のPHを変えれば青色色素も抽出できそうな気がします。

青色染色は藍が有名ですが、タイセイやクサギの実、中には海藻やログウッドに含まれるヘマトキシリンなどでも青色に染められるようです。

現代科学で大抵の植物からどんな色が抽出できるのか分かってきていますが、そういった予備知識を入れずに純粋に色が出る驚きと喜びを味わうことも楽しさの一つです。

これからも沖縄の植物で様々な色をいただきたいと思います。

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