自宅でジーンズ作りは可能か
ジーンズ好きな人の中には、いつか自分でジーンズを作ってみたいと思う人は多いと思います。
結論から言うと、かなり厳しいです。
ただ、自分も昔どうしてもジーンズを作りたかったデニムマニアだったので、諦めきれない人の気持ちも分かります。
そこで今回は、岡山の倉敷でデニム縫製の仕事をしていた私が、お家でどこまでのジーンズならできるのか、コストや技術の面から解説します。
ジーンズ作りに必要な道具
最低限必要なものは以下の4つです。
①生地
デニム生地はネット購入可。手芸屋さんでも大丈夫です。1m1000円ほど。薄手の方が最初は作りやすいかもしれません。(11~14オンスくらい)
失敗をするかもしれないので3~4mは買っておきましょう。
気合を入れて1反(50m)買うのもありかもしれません。1mあたり600円ほどで買えるところもあります。
次にポケット用の生地(スレキ)、なんでも好きなもの選んでもいいですが、生地が厚すぎる、または伸びやすい、ざらざらなどの生地は履き心地に影響します。適度に薄くて伸縮性のないもの。ダブルの幅1mもあれば十分です。
②ボタン、リベット
ネットで購入可。好きなボタンとリベットを買ってください。綺麗に打ち付けるためには、プレス機が必要ですが、出来るだけ安くすませたい場合は手打ちの打ち具を買ってください。後はゴムハンマー、百均で買ってください。
③型紙
買うのが良いと思います。ネットで売っています。型紙を自分で作ろうと思うと相当苦労します。
数千円で型紙が手に入ると思います。オリジナルの型紙が欲しい場合はプロのパタンナーさんに発注しましょう。
④ミシン
パンツとしての形を成しているだけで良いなら、職業用本縫いミシンとロックミシンだけでいいです。中古でも良ければ二つそろえるのに6万ほどあれば足ります。
なぜこのふたつが必要かというと、ジーンズを作れることもそうですが、他のパンツやシャツも作れちゃうからです。応用が利くのです。
ジーンズにおいて
「尻、ヨーク、裾、腰回りの帯、ベルトループ、大股」
この部分は縫い方が違います。チェーンステッチといって、本縫いミシンとは違う特殊なステッチが縫えるミシン使っています。
この部分のためにミシンが追加+付属の部品であるラッパ、押さえ等がいります。
例えば
- 巻き縫いミシン(こだわるならユニオン、あとはペガサス、カンサイスペシャルなど)
- 裾専用ミシン。これもユニオンスペシャルならなおよし
- 帯つけミシン
- ベルトループミシン
- 欲を出して0番糸ミシンも欲しいかも
- いや、股はチェーンでいきたいから1本針本縫いチェーンも必要かも
- いやいや、ポケットは2本針ミシンの方が
- ボタンホールミシンも欲しいし・・・
となればジーンズ沼にはまります。
一番の障壁はここです。
そもそもチェーンステッチとはなんぞや、巻き縫いとはなんぞやと思われる方は特殊な威信は必要なく、ここまでの費用、10万円以内でデニムパンツが作れます。
そうではなく、チェーンステッチでなければだめというのなら、もう数十万円、下手したら100万近くの出費を覚悟してミシンをそろえるしかありませんが、そこまでするくらいなら、岡山かどこか旅行に行ってモノづくり体験させてくれるところに行った方が絶対お得です。もしくはミシン持っている人に借りるなど。
そして、そこまでミシンを揃えちゃうとお店開けます。
チェーンステッチのミシンは買っても置き場所はないしほかにあまり使い道はないし、本当に本気の人しか買っちゃだめなものです。
ここは涙を呑んで、全て本縫いミシンで作ってみることをおすすめします。
もちろんベルトループなんか作りません。ボタンの穴あけは手作業でします。
ボタンの穴あけミシンも買ったらだめです。どうしても欲しいなら、職業用ミシンにボタンホーラー追加で大丈夫です。(プラス9万ほど)
そうすれば初期費用、10万以内でジーンズ風パンツが作れます。
ただ、それなら普通に良いレプリカジーンズ選び放題です。
この時点で、それでもジーンズを作りたいかどうかが分岐点になります。
そんな簡単にジーンズ作れる?
不思議とジーンズの作り方を乗せているウェブや本がありません。
一説にはジーンズは他のパンツに比べて特殊なこと、(需要が少ない)
分業制の縫製の世界で、一本丸々縫える人が少ないことなどがありますが、
個人的にはトラウザーやチノパン、流行りのストレッチの効いたパンツの方が難しいと思います。(縫製レベルという点で)
なのでジーンズは誰でも作れます。高校生でミシン使ったことない人でも作れます。
私は最初9オンスのぺらぺらデニムでジーンズを作りました。ポケットもなぜか同じデニム生地で作ってしまいました。針に糸通すだけでも30分かかってました。
厚みのある部分は針が通らず手縫いしました。
完成に2か月かかりました。
ただ、この1本を完成させたことによって、ジーンズは憧れの対象から、自分が生み出せるものに変わりました。
この感動が現在のモノづくりの原点となっています。
出来ない理由を探すときりがありません。興味のある方はぜひ一度ジーンズ作りに挑戦してみて下さい。
最後に
メーカではなく個人でジーンズづくりをされている方がちらほらいますが、私から見るととんでもない狂気の沙汰(最大級の誉め言葉)だと思います。
なぜなら、ジーンズづくりに必要なのは技術+圧倒的な資金と場所の確保だからです。
数百万、下手したら数千万の投資をして、ジーンズにしか使えないミシンを買って、それで食っていくという覚悟、ミシンのためにすべてを捧げる漢気、まさにロックな生き方。
それが個人デニムクラフターです。
これは誇張でもなんでもなく、デニムに一点集中するのはとんでもないリスクと恐怖との戦いであり、その気持ちを乗り越えて作るジーンズは唯一無二のものになります。
だからこそ価値があるものだし、欲しいと思われるファンが多いのだと思います。