考えごと

ブランドづくりの難しさについて

ブランディングの大切さと意味

昨今、ものを売るにはブランド力が大切だとか、ブランディングがこれから必要になってくると言われて久しいですが、目に見えないブランドというものに頭を悩ませる人も多いのではないでしょうか。

今回は自分なりに考えたブランドとは何かという話と、なぜ大事なのかということについてまとめてみます。

昔はそれほど重要ではなかったブランド

ものがそれほど溢れていなかったほんの100年くらい前は、選択肢もそれほどなかったので、いいものが発明されればそれがよく売れ、作れば作るほど消費される時代でした。

例えば作業着としてできたジーンズなども、帆布やリベットを使って耐久性を上げたパンツということで売れに売れ、それが自然と知名度に繋がり、ブランドが構築されてきました。

リーバイ・ストラウス という名前が「ここのパンツは丈夫で長持ち」という信頼に置き換わり、ブランドとは消費者との信頼の証ということが見えてきました。

現在でもブランドとは「あなたのとこの商品だったら間違いないよね」という機能的信頼でもあり「ここのブランドの商品持ってたらかっこいい、自慢できる」といった精神的信頼も兼ねるようになってきました。

そして信頼を積み重ねるためにはある程度の年月が必要であり、歴史のあるブランドの方が圧倒的に評価が高い点は、信頼を裏切らずこつこつ続けてきた実績のたまものということになります。

ブランド力を高めるとは

ブランドが信頼の証だとすると、ブランド力はどれだけ消費者の信頼を得てきたかということになります。

もし新しい商品を発売して、ブランド力を高めようと思ったら、消費者一人一人に信頼されることを地道に続けていくしかありません。

こうなると、圧倒的に後発ブランドが不利という状況になりますが、ものごとはそう単純ではありません。

なぜかというと、消費者の要望はひとつではないからです。

ジーンズを例に挙げると、丈夫なパンツという点では、リーバイスに負けてしまいますが、フォーマルな場所で履きたいパンツ、という消費者の要望に対しては勝ち筋が見えてきます。

よりドレッシーな生地やデザインで作り、スーツにも合うようなパンツを作ればリーバイスより優位に立てます。

現代はまさに消費者の要望をいかに汲み取り、他社がまだ気づいていない部分にフィットさせるかという重箱の隅をつつくゲームのようなブランド戦国時代です。

ニンテンドースイッチなども、家族で楽しんで会話を増やす、スポーツと組み合わせるなどモノ自体ではなくコト消費に重点を置き、他社ゲームとのスペック争いから一歩抜け出しました。

こうなってくると商品自体の質は担保(当然良いもの)しつつ、コンセプトを売る、作り手の思想を売るというフェーズに突入してきます。

無印良品は名前からも、あえてブランドではないというコンセプトで販売していますが、その思想が評価され、無印良品というブランド化ができあがるというおかしな現象もできています。

何かを語り、それが共感されればストーリーになり、ブランドになる。そこにはもの自体の品質は置いて行かれています。

一方で、シビアにものの機能性や質にこだわった商品づくりをしているメーカーも存在します。

もの自体にもこだわり、ストーリーも両方強いブランドがユニクロなどです。

新しい作り手の生き残り方

まとめると、歴史もない、実績もないメーカーが新たにブランドを構築していくためには

  1. 自らの商品が消費者に何を提供するのかを提示する
  2. 提示した約束を守り、地道に信頼を得ていく

という方法と

  1. 自らの思想、物語を発信する
  2. 共感者を増やす

という方法、そして3つめに

  1. ゲームチェンジを期待する

という3種類に分けられます。

1つ目、2つ目は消費者の潜在的に求めているものを救い上げるか、自らの強烈な個性を発信するかの違いですが、プロダクトアウト、マーケットインとも近い考えです。

自らの思想を発信することは時にアートにも繋がります。

特に現代美術は絵のうまさや技術力よりも、作り手の思想が反映されているかが評価の対象になっています。現代美術家の村上隆さんなどは、漫画やアニメが芸術としてもっと評価されるべき、アートよりも価値が高いという思想の元、漫画、アニメをモチーフとしたアート作品を作ることで、海外から評価が高いです。

3つ目のゲームチェンジとは、ルールそのものを作り変えるという手法です。

例えば柳宗悦が「民藝は美しく、価値がある」と提唱したことで、今まで誰にも見向きもされなかった民藝が価値あるものと認知されるようになりました。

同じように、誰も関心がないもの、無価値と思っていた物でも、市場が価値があると決めてしまえば一気にルールが変わります。時代によって価値観は変わるので、それを見越して行動することもひとつの手です。

最後に

ものにあふれた現代社会では、単純に質の良い商品を生み出すだけでは見向きもされず、どうしてこれを作ったのかしっかりと消費者に伝える必要性が出てきました。

こうなってくると営業力や発信力が売るための武器となり、従来の良いものを黙々と作る職人などには不利な状況になってきました。

日本の工芸品などが衰退している理由のひとつは、技術や質がすばらしい作品だけども、市場には求められていないという点が挙げられます。

日本的質の追及は、競合が少ない場合は圧倒的に有利ですが、同じようなものが増え、さらに周りの質も上がってくれば、優位性は崩れていきます。

工芸品が必要なことは消費者に何を提供するのか提示する、もしくは現代のニーズに合わせた商品を作ることが求められていますが、それを作り手の職人さん自身が担うのは難しいように思います。

今後はそういった良いモノづくりをする作り手と消費者を橋渡しする担い手が増えてくるのではないでしょうか。

RELATED POST