海外で流行っているらしい染めの技術
以前ハイビスカスの花びらを直接布に染める実験を行いました。
この時はバンドルダイという手法を真似して、布の上に花びらを置いてくるくる丸め、蒸すといった方法で花びらの色素を写し取っていました。
エコプリントもバンドルダイと同義で使われていることも多いですが、どうやら草花の形を写し取る(プリントする)手法といった点で少し染め方が違うようです。
今回はハイビスカスや島の植物を使ってエコプリントの実験をしてみます。
エコプリントの仕組み
エコプリントの原理は基本的な草木染めの知識で説明できます。
エコプリントは、草花の色素を熱で抽出して、生地に染み込ませ、媒染液との反応で固定して完成です。
媒染液は、生地に先に漬けておく方法と、蒸す時に同時に媒染するように別途違う生地を挟む方法など、エコプリンターによって方法は違うようです。
実際に実験してみました。
使用した植物
・ハイビスカスの花、葉、フクギ、モッコク、月桃、そこらの葉
媒染
・鉄媒染。15分ほど生地を漬けて軽く絞ってから使用
・生地の表と裏をラップではさみ、水蒸気が生地にかからないようにして1時間ほど蒸す。
これはこれでいいと思えなくもないですが、全体的ににじんではっきりしないところが納得いきません。
青色の花びらの色素、フクギの黄色色素が写っているのが分かりますが、そのほかはよく分かりません。
媒染は草木染めでは染色後に行うことが多いです。
色素を生地に染み込ませ、それを固定させる色止めの効果を期待してるからです。
エコプリントは先媒染と同じ効果と考えられます。
先媒染は、色素量が少ない染液の場合、生地に吸着しやすくする効果が期待されます。
失敗から学ぶ
以前ミョウバン媒染でバンドルダイをしたときはすぐ色落ちしましたが、鉄媒染の方が色の定着がよさそうです。
にじみが出たということは、生地に含まれる水分が多かったのかと思ったので、今度は完全に乾燥させた生地の上に草花を置いてみます。
花びらとフクギの模様がはっきりとプリントされています。それ以外の草花はまったく写っていません。
1度目は、花びらとフクギがにじみ、他の草花はそこそこプリントされました。
2度目は、花びらとフクギが丁度良くプリントされ、他の草花は写っていません。
以上のことからいくつか考察が浮かびます。
・色素が生地に移るには水分と熱が必要(必ずしも蒸す必要はないと思われる)
・元々水分が多い植物、花びらなどはそこから水分が供給される
・乾燥している草花、水をはじく植物は生地自体を湿らせておく必要がある
もしくは鉄媒染した別生地を挟む
・条件がそろえばどんな植物でもある程度染められる
最終実験
最終的に納得のいくプリントができました。
花びらの形がはっきりとプロントでき、にじみも少ないです。
葉っぱもいくつかプリントすることができました。
完全に乾燥した生地なのになぜ葉っぱがプリントされたのか。
それは先に葉っぱを鉄媒染の液に漬けておいたからです。
生地から水分が供給されないので、葉っぱをできるだけしめらせることでプリントができました。
エコプリントの醍醐味
エコプリントについて色々調べてみましたが、基本的な方法は載っているけどそれ以上のことはあいまいな情報が多かったです。
それもそのはず、実際にやってみると分かりましたが、複雑な条件が絡み合って出来ているからです。
媒染液の濃度はどれくらいか、漬け込む時間はどれくらいか
生地の水分量をどの程度に保つか
植物の下処理をどうするか
どれくらいの芯の太さで巻くか。どの程度のきつさか
密閉具合、蒸し時間
生地と草花の両面に何を挟むか、挟まないか
生地の厚さ、材質、重さなども関係する
例えば植物によって含まれる水分量や色素の量、抽出具合が変わるので、
均一にプリントしたい場合は条件が似たような植物探しが必要です。
様々な植物を同時にプリントすることよりも、
性質が似た1、2種類の植物をプリントする方が成功率は高くなります。
自分が理想とするプリントが可能な植物探しが一番重要とも言えます。
今回自分は花びらと葉っぱを同時にプリントするために、葉っぱを媒染液につける方法をとりました。
逆に生地を湿らせて、花びらの方を乾燥させる、もしくは吸水ペーパーを上にかぶせるといった方法も考えられます。
つまりエコプリントは、材料が同じだけで、レシピが人によって違う料理のようなものと捉えます。
それぞれの独自のレシピと表現で出来ているので、おそらくネットに載っている情報で同じようにしてもみんな結果が変わるのではないでしょうか。
日本で草木染めを生業としている人達が色の再現性を重んじるものづくりをしている一方、広げてみるまで結果が分からないエコプリントのわくわく感は、日本人はなかなか思いつかない発想ではないでしょうか。