沖縄ではメジャーな月桃の編み物
植物繊維で織物や編み物をする文化というのは日本各地に残っていますが、沖縄でもその地に根差した植物での繊維利用というのは数多くあります。
沖縄織物の文献を調べてみると1400年代以降からカラムシ、アサ、芭蕉、アダン、葛、ブッソウゲ、リュウゼツラン、ガマなど様々な繊維織物が誕生したようです。
現在でも残っているのは芭蕉、苧麻、アダン、月桃といったところでしょうか。
私は今ハイビスカスの枝から繊維を取り出していますが、やはり現代まで残っている植物繊維と、残っていない植物とでは、違いがあると感じます。
まず現代でも残っている植物は栽培が比較的容易、短期間での成長速度が速いという点が言えます。
つまりコスパが良いとうことです。
また、繊維としても細く長く強靭なため、織物、編み物がやりやすいという点も挙げられます。
月桃も偽茎の部分と葉の部分、両方使えるため、効率的に繊維を採取できる植物のひとつです。
また、葉は器替わりになったり虫よけ効果もあり、またアロマなどでも使われる汎用性の高さが人々に今でも利用される理由なのではと思います。
それでも綿の登場以降は徐々に文化は衰退していき、現在は保存するために存続しているという状態のものも多いです。
月桃の繊維の取り出し方


月桃はまず偽茎の部分を切り落とします。茎の構造はミルフィーユ状に何層も繊維が重なっている状態なので、まずそれをはがします。
1つの茎から5~6枚の繊維が取り出せます。


月桃の繊維の裏側には透明なワタのようなものがついているので、それをスプーンなどでこそぎます。
この辺りは職人さんにより、ワタをついたままの繊維を使う場合とワタを取る場合とがあります。ワタがついていると強度は上がるが繊維が割れやすく、繊維の裏側がざらっとなり、ワタを取ると強度は下がるが綺麗な繊維が取れ、つるっとします。
ちなみにワタの部分は月桃紙の原料にもなるようです。

後は乾燥させ、好みの幅に裂けば作品に加工できます。月桃はアルカリで煮込む必要もなく、また繊維は硬すぎず柔らかすぎず裂くことも簡単なので、簡単に作品作りができる植物になります。



コースターから円座、かごバッグ、縄など様々な民具を作ることができるので、初心者向けの素材だと思います。
月桃民具の現在
現在月桃の工芸品の文化が残っているのは主に八重山です。
八重山は戦後の物資の欠乏などから、自然素材を使った工芸文化が色濃く残っているという歴史があります。
現在芭蕉布は伝統的工芸品として認定されていますが、月桃の民具はそういった形で保護されていません。
つまりいつ技術が途絶えてしまってもおかしくないということです。
月桃編みも先人の大切な知恵のひとつとして、自分も少し勉強をして伝えていこうと思います。