ハイビスカス

ハイビスカスの花びらから高濃度色素の抽出方法完全版

色素抽出にはコツが必要

今までハイビスカスの花びら色素中抽出の研究を計100回以上、半年間ほど続けてきました。

ハイビスカスの花で染めてみるハイビスカスの花びらに含まれる赤色色素を抽出して、シルクで染めてみました。...
ハイビスカスの花びらからクレヨンづくり草木染めの染料から顔料を作る実験を行いました。今回はハイビスカスの花びらの染液から、顔料を抽出し、クレヨンを作ってみます。...

天然染料から色素(顔料)抽出の方法は、草木染をしていると何となくわかってきますし、ネットの情報でもちらほら顔料づくりをしている方もいるので、概要はつかめます。

必要な材料は

・染料

・ミョウバン

・重曹

となります。草木染めにおける媒染の工程を染液の中で行うことで、色素の粒子が固まって沈殿する仕組みです。

ただし実際にやってみると分かりますが、簡単に色素が沈殿しないという現象が起きてきます。

そして、分量や注意点など肝心な細かい部分を説明している記事が見当たらなかったので、今回自分が実験で得た情報を公開します。

実は染料を顔料化する試みは数百年前から行われています。

絵画の世界ではレーキ顔料と呼ばれ、染料に何かしらの金属や塩を加えて顔料のみ沈殿させていました。

レーキ顔料で主に使われるのは素材は茜やコチニールなどで、材料も重曹の代わりにソーダ灰を使うなど若干違いはありますが、原理は同じです。

失敗する要因

まず、失敗する要因は大きく分けて3つあります。

  1. 染料の濃度が足りない
  2. ミョウバン、重曹の分量が適切でない
  3. PHが適切でない

①染料の濃度について

染液は出来るだけ濃い方が望ましい。元々色素が薄い材料は出来るだけ少ない水で煮詰めて濃くすることで抽出しやすくなります。ハイビスカスの花びらはアントシアニン性の色素なので、草木染めする分にも薄い染料ですが、濃くすることで十分な顔料が確保できます。

②ミョウバン、重曹の分量について

ミョウバンや重曹は水に溶ける最大量が決まっています。ミョウバンの場合は100mlあたり約10gです。ただし、限界まで溶かす必要はなく、染液にもよりますが、100mlあたり1~2gで足ります。重曹はPH調整と発砲による凝集促進のために必要なので、さらに少ない量で充分です。

③PHが適正でない

PHによって同じ材料でも取れる色素量が異なります。

例えばハイビスカスの場合、PH4以下になると色素が凝集しなくなり、どれだけ頑張っても赤色の顔料は取れません。一番色素が取れるのはPH7~8になります。

なぜPHにより凝集具合が変わるのか、今の段階では分かっていませんが、おそらく表面電位が関係しているのではと推測されます。

表面電位とは

粒子の表面にただよっている電位。ゼータ電位とも。

簡単に言うと、粒子の表面がマイナスの電位だらけだと、マイナス同士、粒子が反発するので、できれば表面電位がプラスマイナスがない状態(等電点)が一番くっつきやすいという話。表面電位がプラスになるかマイナスになるかはPHによって変わるので、どこかの段階で最も凝集しやすいPHがあるという予測が成り立つ。

例えばコーヒーは酸性で口当たりがざらつき、アルカリ性で滑らかになることから、中性付近に等電点があると考えられる。

ハイビスカスの花びらから高濃度色素抽出方法

今回はハイビスカスの花びらの顔料化の手順について解説します。

準備するもの

・乾燥したハイビスカスの花びら10g

・水1リットル

・ミョウバン20g

・重曹5~10g

・クエン酸1g

① まず乾燥花びらを水に漬けて3時間ほど待ちます。この時、クエン酸を少し加えると抽出時間が短縮されます。乾燥花びらではなく生の花びらを使う場合、さらに抽出時間がかかるので乾燥をおすすめします。

アントシアニンは熱を加えると色素が分解してくるので、常温で抽出します。

② この時点で薄紫の染料が取れるので、染料を60度まで加熱します。

染液にミョウバンを加え、よく溶かします。すこしだまのような塊が沈殿しはじめても気にせず完全にミョウバンを溶かします。

③ 重曹を少しずつ加えてPHを8ほどに持って行きます。急に加えると泡があふれ出すので、小さじ1杯ほどから増やしていきます。染料を加熱したため。重曹が強アルカリ性に変化します。

④ 青い濁った色になるとコーヒーフィルターなどで濾していきます。

この状態が重要です。すこしトロっとした感じの染液が成功。さらさらした場合は失敗が多いです。フィルターの下から透明な水が出ていると、色素がしっかり凝集されている証拠です。

これは少し失敗です。下に凝集した色素は多少取れますが、水に溶けている分が流れ出るのでもったいないです。

フィルターから色付きの染液が出るとそれだけ粒子が固まり切っていないということになります。

フィルターにたまった色素の塊を乾燥させると泥のようになります。この段階で捺染などで使えます。

この泥は放置していても1か月ほどはもちますが、カビをはやしたくない場合は防腐剤やはちみつを添加します。

これをさらに乾燥させると顔料になり、クレヨンや絵の具の元になります。

クレヨンにする場合、元の色素によってはさらに顔料をすりばちなどで細かくしないとワックスと混ざらない可能性があるので注意です。

右側が高濃度顔料。左はミョウバン、重曹の量を間違えた時。

全く見た目が違います。水に溶かすと左側も藍色になりますが、絵の具にする際、高濃度顔料の方が少ない量で済みます。

PHを微調整すると取れる顔料の色が変わりますが、染め付けてからクエン酸水などに漬けると赤色に変わったりするので、PHで色が変わる色素はそれほど神経質になる必要はありません。

泥の状態で胡粉を加えることで顔料の質量が増えますが、少しパステル調の色合いになります。

注意点など

ミョウバンや重曹の量は多すぎると粒子が上手く固まりません。最初は少なすぎるくらいから徐々に増やしてもよいです。

重曹の代わりに石灰水を使うことでアルカリに傾けることも可能ですが、染液が薄まるので、取れる顔料の色が薄くなります。

ハイビスカス以外の染料で顔料化を行う場合は、ミョウバン、重曹の量、温度が変わってきます

前述したように、各分量が多少違っていても色素が取れることは取れますが、濃度、取れる量はまったく変わってくるので、絵の具や染めに使う場合は分量をしっかり図ることが重要になってきます。

RELATED POST