植物繊維を素材として考える
古来から日本をはじめ、世界では身近な植物を使って道具や器、服を作る文化や歴史がありました。
綿花が栽培される前までは、植物から取れる繊維が様々な原料として活用されてきました。
ハイビスカスを素材として見た時、一番最初に頭に浮かんだのは和紙です。
和紙の原料は楮などの植物繊維。今回は和紙の手法にならって繊維を抽出してみることにします。
現代でも沖縄の芭蕉布など植物繊維を糸にして布を作り、着物を仕立てる技術が残っています。
それとは別に和紙にした状態から服に仕立てる紙衣、和紙を細かく裁断して撚りをかけ糸にする紙糸なる手法も存在し、現代アパレルにも応用されています。
必要な手順
和紙になるまでの工程は
- 枝を蒸す
- 表面の皮をはぐ
- 中の皮を取り出し、洗う
- アルカリ性の水で煮込む
- 叩いたり裂いたりしてほぐす
- 漉く
といった、家庭でもできそうな単純作業です。単純がゆえに奥が深いということはこの後思い知ることになります。
失敗に次ぐ失敗。どう蒸したらいいのか、剝ぐための道具は何がいいのか、そもそもどの部分が和紙の原料となるのか試行錯誤の連続です。
どうやら10分ほどお湯につけるだけで皮はむけそうです。表面の茶色い部分を落とすと
緑の植物繊維が見えてきます。道具はデザインカッターが便利でした。
そもそも枝を全部粉々にして和紙にできないかと思いましたが、枝を全て粉砕してどろどろのパルプにし、固めるのは洋紙の手法になります。
和紙は不純物を取り除いたセルロースの部分を使います。
洋紙は不純物が多く含まれ、薬品を多く使うため強度や耐久性に劣り、専用機材などが必要になるため、なるべくエコで簡単な和紙作りを選びました。
アルカリ液は消石灰を使いました。しばらく煮込んで繊維を裂くと薄緑のセルロースが残りました。
これをさらに細かくしていけば和紙の原料として使えそうです。和紙作成については別記事にまとめます。
もっと効率的な繊維の取り出し方はないか
ハイビスカスの枝から不純物(リグニン等)を取り除いたセルロース抽出は、物理的に剥いで煮込む方法以外にも候補はあります。
①アルカリ液で煮込む
②腐らせる
腐らせる方法は、微生物や菌、虫などに植物繊維を分解してもらう方法になります。
日本最大古布のひとつ、葛布は、草の上に煮た葛をしいて発酵させます。
海外では、レッティングと呼ばれ、麻の糸を作る際に発酵しリグニンを分解します。
実際に草の上に寝かしてみたり、キノコに含まれる木材腐朽菌、シロアリに食べさせるなど実験を繰り返しましたが、思わぬところで簡単な手法が分かりました。
水に漬ける、だけ
ハイビスカス織の師、出口富美子さんに師事いただいた手法は、枝をそのまま水に漬けて放置するといったものでした。
原理は微生物による腐敗ですが、なぜ水に漬けたほうが良いのかは分かりません。
強烈な腐敗臭がデメリットとしてありましたが、ある手法により解決されました。
使用する道具は水のみ。そして何も手を加える必要がないことから、この手法を今後の繊維抽出の主な方法とします。
急ぎ原料が必要な場合は煮込む方がよさそうです。
最も原始的な腐らせて繊維を取る手法は世界各国で行われてきました。
その後、灰汁(弱アルカリ)を入れるとさらに柔らかくなることが分かり、
現在では苛性ソーダなどの強アルカリ水で煮込むことが最短で繊維を抽出する方法となります。