家の引き出しに眠っていた着物
戦後の嫁入り道具には仕立てた着物が入っていたと聞きます。
当時の価値でも数十万から百万以上のものも。
祖母や祖父が使っていた着物地をそのままにしておくのはもったいないので、
パンツに仕立ててみました。
外側は祖父の大島紬です。
着物生地の素材はほぼ絹、次いで綿や麻、ポリエステルなど。
着物の生地を使う時に気を付けることは縮率の違いとパターン(型紙)です。
特にパターンは今までの洋服とはまた違った考えで作り直す必要があります。
着物は直線裁ちの服
例えばデニムの生地。
工場で織られる生地幅は通常80~150cmほど。
昔の旧力織機は幅が狭く、現代のコンピュータ織機は幅が長くなっています。
着物の生地に使われる反物は約36~40cm。
また着物の生地は貴重なもの。
必然的に無駄のないようなパターン作りが求められるため、曲線を使わずに作られるようになりました。
長方形や正方形を手縫いで縫い合わせた単純な縫製は、ほどいて洗いにかける時や、サイズを変えて縫いなおす時に容易になるので、何世代にも無駄なく使える設計になっています。
ちなみに18世紀ごろのヨーロッパでよく着用されていたスモック(幼稚園児が着るようなギャザーが入ったかぶり服)もパターンは直線で、ギャザーで曲線を表現しています。
直線と曲線の着心地の違い
人間の体は曲線なので、パターンも曲線やダーツを組み合わせて立体的に作る方が着心地はいいです。
ただし着心地=体の稼働域を邪魔しないと定義するなら、一番効率的なのはスーパーストレッチの全身タイツになってしまいます。
正直、着物(和服)でも洋服でも、ある程度動くことには困りません。
生地の種類もさることながら、和装は使っている生地の量が多いからです。
生地が余っていればその分体も動きます。現代のルーズシルエットといったところでしょうか。
無駄ないパターンと動きの両立をかねる和装のすばらしさは、今後の服作りの刺激になりました。
今後の服作り
今までは美しさと人体構造を考えたパターン作りをしていました。
複雑なパターン=優れたパターン
シンプルなパターン=動きにくい、見栄えが悪い
といった偏った考えを持っていました。反省すべきところです。
今後は使う生地をなるべく無駄のないパターンにしようかと思います。
生地に合わせたパターン。
生地ごとにパターンが変わります。量産はほぼ無理です、が個人では可能。
またひとつ勉強になりました。