今は染める人の少ない幻の色
ノニと言えばノニジュースで有名ですが、染色界隈ではノニの根っこを使って赤や黄色の色素が抽出できることで知られています。
日本名はヤエヤマアオキ、またはインディアンマルベリーとも言います。
熱帯地方で育つノニは、日本では沖縄方面でよく見られます。とはいえ、インドネシアなどの本場熱帯地域に比べて小ぶりな印象があります。
ノニの染色は手間と時間がかかります。
まず、根っこを探して切り落とすという作業に苦労します。
木の命である根っこを分けていただくわけなので、むやみやたらに伐採すると木そのものが枯れてしまいます。
自分の場合は、根が張り出して土からはみ出た部分が運よく見つかった時のみ収穫します。
さらに根っこの表皮の部分は不要なので削る必要があります。
数百グラムの根の採取、下処理だけで1日かかることもあります。
これらの手間が、他の赤色、黄色染色に取って代わられた理由かと思いますが、
その手間をかけてでも得られる美しい色合いは他の何物にもかえられない感動があります。
ノニの染液
ノニの根っこは比較的柔らかく、表皮もざくざく切り落とせます。
中心部分は少し硬く、剪定ばさみでやっと削れて行きます。
この量で約100グラム。4番液くらいまで染められます。
いきなり煮込むと茶色い液が出てくるので、まず灰や石灰水などでアルカリに傾け、赤色色素を抽出します。その後根っこを煮込んでいきます。
煮込みすぎるとまた色がくすんでくるのでちょくちょく様子を見る必要があります。
ちょっと失敗です。本来もう少し赤が強くでますが、黄色色素が混ざっています。
アルカリ性に傾けることで赤色、酸性に傾けると黄色に発色します。
個人的にはこの黄色の色が何とも気に入っているので、ノニの採取を続けています。
黄金色の染液はハイビスカスの繊維とも相性がいいです。
実はノニの葉も緑の染液が取れる貴重なもの。
通常植物から緑の色素を取ろうと思ったら銅媒染が必要ですが、
弱アルカリ水で煮込むと鮮やかな緑が抽出されます。
もしかしたらノニの実からも何か面白い色が取れそうですが、それはまたの機会にしておきます。